同種の薬と比較すると、効き始めは遅いが、その後安定して長く効くという特徴がある。
薬の強さは第二世代抗ヒスタミン薬の中では中間くらいのポジションで、アレロックや
ジルテック、ザイザルよりは弱いが、アレグラやクラリチンよりは強いという位置づけ。
眠気に関しても同様、アレロックやジルテックより弱く、アレグラやクラリチンよりは眠く
なる可能性があるといった位置づけだ。
エバステルに関する主な情報
1日薬価:107.3円(1日1錠) 薬価サーチより一般名:エバスチン
製造メーカー:大日本住友製薬株式会社
エバステルに関する一次情報 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
エバステルに関しての主なトピックは以下の通り。
・エバステルとアレグラ、アレロックなど他の第二世代抗ヒスタミン薬との違い
・その他エバステルに関する話題
エバステルとアレグラ、アレロックなど他の第二世代抗ヒスタミン薬との違い
■効果についてエバステルの他の第二世代抗ヒスタミン薬と比較した特徴に関しては、 テキサス大学の
Grant氏が行った白人成人男性を対象とした比較実験がわかりやすい。下記、翻訳をしてみた。
花粉症対策まとめ「第二世代抗ヒスタミン薬の効果比較論文の翻訳を試みる」
内容としては、白人成人男性14人に対して、アレルゲンであるヒスタミンを肌に入れた後、薬を
飲ませて蕁麻疹やその周りの炎症の面積の抑制に関する時間推移を計測したもの。
蕁麻疹に対する効果なので、花粉症に対する効果と完全一致するかというところは考慮する
必要があるが、面積というのは計測しやすい客観指標ではあるので、ヒスタミンに対する効果を
見るにはわかりやすいものではある。
エバステルに関するこの実験のまとめとしては、上記の蕁麻疹面積の24時間推移を描いた
グラフがわかりやすい。エバステルは24時間時点で下から2番めの点線だ。結論としては、
・効果の強さはジルテック>エバステル=アレジオン>アレグラ>クラリチンで、ジルテックより
弱いが、アレグラやクラリチンよりは強い
・同程度の強さのアレジオンと比較した特徴は、アレジオンは薬の効きが速いのに対して、
エバステルは4~6時間くらいでやっと効いてくるくらい効きが遅い。ただし、一旦効くと、その後
は安定して長く効く
といったところ。効果の遅さは各薬の血中最高濃度に到達する時間であるTmaxを比較すること
でもわかる。
・第二世代抗ヒスタミン薬のTmax比較(±の数字は普通の人はその範囲に収まるという意味)
エバステル:5.2±1.1 (測定対象はエバスチン代謝物のカレバスチン)
ジルテック:1.44±0.50
アレロック:1.00±0.32
アレジオン:1.9 (±のデータはなし)
アレグラ:2.2±0.8
クラリチン:1.6±0.4 (他の薬の投与条件がわからないので食後で計算。空腹時は1.2±0.3)
ということで、エバステルのTmaxが相当遅いことがわかる。ちなみに効きが遅い理由に関して、
上記論文でも仮説が挙がっていたが、エバステルの有効成分であるエバスチンは、体内で
分解されて(これを代謝という)、カレバスチンという物質に変わり、これが抗ヒスタミン作用を
示す本体なのだが、このカレバスチンに変化するのに時間がかかることが原因と言われている。
その他、医師や薬剤師など医療関係者による第二世代抗ヒスタミン薬の比較記事は下記。
新宿駅前クリニック「眠くならない花粉症治療薬」
アレルギー科のある病院の記事で、第二世代抗ヒスタミン薬の特徴を横断的にまとめている。
エバステルは眠気が少なく、比較的よく効くという評価。
なんくるないさぁ~「抗アレルギー薬(花粉症)を比較してみました。」
薬剤師の方が経験に基づいて、主に第二世代抗ヒスタミン薬の比較をしている記事。
この方によると、エバステルはジルテックと同じような感じで、クラリチンより効くが、アレロック
よりは効かず、ちょっと眠気がある薬という評価。
■眠気について
他の抗ヒスタミン薬と比較しても眠気は少ない方。薬に関する情報をまとめた添付文書や
インタビューフォームの数値を極力同基準(国内の承認時・使用成績調査合計)で比較して
みたものが下記。
・第二世代抗ヒスタミン薬の眠気の副作用比較(国内の承認時・使用成績調査合計)
エバステルの副作用 眠気:1.75%(146件/8349例中) ※調査合計値はインタビューフォーム参照
アレロックの副作用 眠気:7.0%(674件/9620例中)
アレグラの副作用 眠気:2.38%(104件/4367例中) ※調査合計値はインタビューフォーム参照
アレジオンの副作用 眠気:1.21%(102件/8443例中)
クラリチンの副作用 眠気:6.35%(105件/1653例中) ※クラリチンは使用成績調査の値の記載なし
ザイザルの副作用 眠気:5.2%(67件/1292例中) ※ザイザルは海外データのみ存在
ジルテックの副作用 眠気:3.26%(233件/7155例中) ※調査合計値はインタビューフォーム参照
■薬価について
1日2回のものと1回のものがあるので、1日あたりの薬価で比較をしてみる。
エバステル 107.3円(1日1回)
ジルテック 109.9円(1日1回)
ザイザル 111.8円(1日1回)
アレジオン 146円(1日1回)
アレグラ 151.2円(1日2回)
クラリチン 99.4円(1日1回)
アレロック 120.4円(1日2回)
上記、比較を見てみると比較的安い部類の薬であることがわかる。
その他エバステルに関する話題
その他、気になったエバステルに関するネット上の話題をいくつかピックアップ。薬剤師4コマ劇場「エバステル基礎知識」
薬剤師の方が、現場ではエバステルがどういうポジションなのかといったことに関して言及を
している。効果、眠気のなさ、値段など、同種の薬と比べると、どれをとっても際立った特徴の
ない薬なのだが、粉しか飲めない子が初めて飲む錠剤っていうポジションとのこと。いちご味
で、そこそこ飲める味なのだろう。
ミクスonline「大日本製薬 ガチフロ、エバステルが減少」
2004年の記事で、エバステルに関する売上の02年、03年実績と04年見込みに関して記載。
111億円―102億円―92億円となっていて、年を減るごとに減っているのがわかる。
古い薬で、他のもっと効く薬や、眠くならない薬などのシェアを奪われているものと思われる。
アポネットR研究会・最近の話題「エバステルなどのスイッチが了承(一般用医薬品部会)」
エバステルの市販薬化が承認されたという話題。エバステルALという商品名で出るらしいが、
2013年4月時点ではまだ発売されていない。
【追記】2014年1月20日に興和から発売されたようだ。
http://www.kowa.co.jp/news/2014/press140127.pdf
医療用が10mgなのに対してこの市販薬は5mgになっているところが処方薬と市販薬の違い。
服用回数が1日1錠なのは医療用と同じ。12錠2000円で市販薬の1日薬価は166.6円。
主な第二世代抗ヒスタミン薬の市販薬との値段比較は下記の通り。
商品名 | 価格(税抜) | 容量 | 服用回数 | 1日薬価 |
エバステルAL | 2000円 | 12錠 | 1日1回 | 166.6円 |
アレグラFX | 1886円 | 28錠 | 1日2回 | 134.7円 |
アレジオン20 | 1980円 | 12錠 | 1日1回 | 165円 |
コンタック鼻炎Z、ストナリニZ | 1791円 | 10錠 | 1日1回 | 179.1円 |
効き目で選ぶならジルテック(コンタック鼻炎Z、ストナリニZ)で、値段と眠気の少なさで選ぶなら
アレグラ(アレグラFX)がよいと思われるが、特徴が中途半端で値段も特に安くないエバステルを
積極的に選ぶ必要があるかというと疑問のあるところだ。
ちなみに、市販薬のエバステルが5mgなのは、アレルギー性鼻炎に対しては5mgで十分な効果
が期待できると検証がされているからだと思われる。該当箇所を一部抜粋する。
エバステルインタビューフォーム(PDF)
(4)検証的試験
1)無作為化並行用量反応試験
通年性アレルギー性鼻炎(総投与例182例)を対象に 5mg,10mgならびに20mg1日1回2週間投与
で用量設定のための二重盲検比較試験が実施された.最終全般改善度の改善率は5mg群が50.0%,10mg群が42.6%,20mg群が48.8%であり,3用量群間に有意差は認められなかった.
副作用発現率はそれぞれ1.7%,7.5%,9.3%,概括安全度の安全率はそれぞれ98.3%,90.6%,88.9% であり,5mgの安全性が高く,有用率はそれぞれ47.9%,41.7%,44.2%
であった.改善率からみて5mg以上の用量で効果が期待できると考えられた. 安全性の評価に
おいて,副作用発現率は用量の低下とともに低率となり,5mgの高い安全性が示唆され,十分な
安全性が確保されているものと考えられた.本結果から,本剤の用量を1日1回5mgとすることは
妥当であると判断され,通年性アレルギー性鼻炎に対する第III相比較試験の用量として
1日1回5mgが選択された .
つまりはアレルギー性鼻炎用途に関しては1日1回5mgで効果が十分に確認された上、副作用
の発現率も低かったということ。