花粉症の点鼻薬 ナゾネックスのまとめ

ナゾネックスは花粉症のステロイド点鼻薬(処方薬)のひとつ。現在花粉症治療の中心となっている
飲み薬の第二世代抗ヒスタミン薬(クラリチン、ジルテックなど)よりも効果が高いことがいくつかの
治験データから示されているが、同じステロイド点鼻薬同士の比較に関しては、特に効果の差は
確認されていない。
ただし、1日2回以上の点鼻が必要なフルナーゼやリノコート、アルデシンAQネーザル、ナザールAR
などと1日1回の点鼻で効果が持続するため、同じ1日1回タイプのアラミスト、エリザスとともに
花粉症治療で処方される点鼻薬の主流のひとつになっている。

ナゾネックスに関する主な情報

1日薬価:137.7円(1日1回各鼻腔に2噴射づつ) 薬価サーチより
一般名:モメタゾンフランカルボン酸エステル
製造メーカー:MSD株式会社
ナゾネックスに関する一次情報(添付文書) (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
ナゾネックスのインタビューフォーム(詳細情報、PDF)

ナゾネックスは現在主流になりつつある1日1回タイプのステロイド点鼻薬のひとつ。
眠くならない花粉症内服薬として有名なクラリチンを作っているMSD株式会社が発売している薬。
薬理上はヒトグルココルチコイド受容体への親和性がフルナーゼよりも高かったり、ラットに対する
実験でリノコート、アルデシンAQネーザル、ナザールARの成分よりも鼻水を抑えられたり、
フルナーゼの成分よりも鼻のかゆみやくしゃみを抑えられたという結果が出ているが、人に対する
治験結果では、いずれもフルナーゼ等、他のステロイド点鼻薬との効果の差分は確認されていない。

なお、ステロイド薬は一般的には体の免疫を弱めたり、副腎皮質によるホルモン生成機能を退化
させてしまうという副作用があるが、ステロイド点鼻薬に関しては患部へ局所的に作用をするため、
そうした副作用は少ないと言われている。

ナゾネックスとフルナーゼ、アラミスト、エリザス等他のステロイド点鼻薬との比較

何度か記載をしているが、ナゾネックスと他のステロイド点鼻薬との間で薬の強さという意味では
いずれの治験データでも違いは確認されていない。

フルナーゼやリノコート、アルデシンAQネーザル、ナザールARなどとの違いで言うと、これらは
1日2回以上の点鼻が必要なのに対し、ナゾネックスは1日1回で済むというのが最も大きな違いだ。
ただし、フルナーゼにはジェネリックがあり、ナザールARはステロイド点鼻薬にもかかわらず、
市販の薬局で購入ができるので、薬を安く購入したり、医者にかからず点鼻薬を購入したいという
ようなニーズがある場合は、これらを選択するというのもありかと。

同じ1日1回タイプのナゾネックス、アラミスト、エリザスに関する主な違いは下記の通り。
・ナゾネックス、アラミストは液剤。エリザスは粉剤。粉剤のメリットは点鼻後の液ダレがなく化粧崩れがないことだと言われているが、ナゾネックス、アラミストに関してもフルナーゼと比べて液ダレが改善されているとの評判
・現在はナゾネックス、アラミスト、エリザスともに匂いはなし(ナゾネックスは以前は匂いがあった)
・アラミストに関してはフルナーゼよりも効果の発現が早い(フルナーゼが2日、アラミストが1日)ことが確認されている。他の薬剤は比較データなし
・アラミストは眼症状(眼のかゆみ、流涙、眼の赤み)にも効果があることが確認されている。原理は未解明
・アラミストは横にレバーがある形状で力のない人には押しにくいという評判
・エリザスには小児適応がない。ナゾネックスは3歳以上、アラミストは2歳以上の小児適応あり

結論として、点鼻スプレーとしてはナゾネックスが一番オーソドックスな形状になっている。
薬の効果の比較に関する治験論文等の詳細は下記にまとめたので、興味がある方はどうぞ。
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ

他、いくつか比較に関する参考記事を挙げておく。

薬剤師のお勉強ノート「1日1回使用の鼻噴霧ステロイドの特徴」
薬剤師の方が鼻噴霧ステロイドに関してまとめている記事。鼻噴霧ステロイドはINSとも呼ぶようだ。
現時点で1日1回タイプのINSはナゾネックス、アラミスト、エリザスの3種類で、ナゾネックスは
バイオアベイラビリティが低く、アラミストは眼にも効き、エリザスは粉末なので液体だと滲みる人にも
使えるというのが特徴なようだ。 このバイオアベイラビリティというのが何かというと、調べてみたら
どうやら薬の血中濃度がどれだけ上がるかということを指している言葉のようだ。ステロイドは
血中に溶けてしまうと全身をめぐることになり、副腎皮質でのホルモン生成機能を退化させてしまう
など、副作用を発生させてしまうので、INSに関しては血中に溶けない方がベターなわけだ。
INSはそもそも血中にステロイドがほとんど行かないので経口ステロイド薬よりも安全とされているが、
中でもナゾネックスは血中移行が少ないということになる。ちなみに欧米ではINSの利用率が高いとのこと。

薬剤師4コマ劇場R2「ナザール・ネクスト・ジェネレーション」
この薬剤師の方によると、同じ1日1回タイプのステロイド点鼻薬の中ではナゾネックスのほうが
アラミストよりも売れているとのこと。アラミストのほうがレバーが固い件に関しても言及している。

どうなの?調剤薬局の薬剤師に聞いてみよう!!「エリザス点鼻粉末が今年人気な件 」
主には粉末タイプのステロイド点鼻薬エリザスに関する話題だが、ナゾネックス、アラミストなどの
液タイプのものと粉末タイプのもので何が違うのかに関して記載がされている。
粉末タイプは、鼻から液が垂れず、鼻づまりが起きていても粒子が回りこんで鼻の奥まで届くのが
特徴とのこと。

ナゾネックスと同成分の市販薬について

「ナゾネックス 市販薬」のようなワードで検索してくる方が多いので記載しておくが、ナゾネックスは
病院の処方箋がないと手に入らない「処方薬」であって市販薬はない。 花粉症の薬は病院に
行ったほうが断然よい薬が手に入るので、基本病院に行くことをおすすめする。値段も1ヶ月以上の
長期利用では市販薬よりも処方薬の方が診察料を含めても花粉症の薬は安く済むというのが
結論として出ている。

ただし、どうしても市販の点鼻薬の中でステロイド点鼻薬はないのかということで探すのであれば、
ナザールARまたはコンタック(R)鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>の2つだけは、同種の
ステロイド点鼻薬になるのでそれを探すとよいであろう。ナゾネックスとの違いは点鼻を1日2~4回
しなければならないこと。効果の強さ自体はナゾネックスと変わらない。詳細は下記を参照。
花粉症の点鼻薬 ナザールARのまとめ
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ
花粉症の薬を病院で処方してもらうといくら掛かるのか計算してみる

その他、ナゾネックスに関するネット上の話題


アポネットR研究会・最近の話題「モメタゾン(主に点鼻)と不整脈(Signal)」
これはあくまで「可能性」ということで、因果関係が立証されたものではないということだが、
ナゾネックスの成分「モメタゾン」を含む薬剤の使用による不整脈の報告があったという内容の
記載がある。あくまで現段階では「可能性」ということだが、参考情報として記載しておく。

耳鼻科医の診療日記「妊娠している方に使える抗アレルギー剤は?」
妊婦の方が使っても問題無いと思われる花粉症の薬に関して耳鼻科医の方が解説をしている記事。
薬の投与方法として、内服薬よりも点鼻薬のほうが薬の血中濃度が上がらないので、お腹の
赤ちゃんに対してより安全性が高いとのこと。そうした判断からナゾネックス等のステロイド点鼻薬も
使って良いものとの見解を出している。

薬作り職人のブログ「ナゾネックスの名前の由来」
ナゾネックスの名前の由来について。インタビューフォームによると鼻を意味するnasalと次世代を
意味するnext generationを組み合わせてnasonexになったとのこと。

MSD「定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「ナゾネックス®」点鼻液 無香製剤への変更のお知らせ」
ナゾネックスがそれまで薔薇のような香りがした有香製剤から無香製剤に変更したという
2011年1月11日のニュース。臭いのもとになっていたフェニルエチルアルコールという成分を
取り除いたことにより実現したとのこと。

日本経済新聞「花粉症の薬は市販薬より処方薬が「安い」 」
2011年にナゾネックスが無香化されたことに触れている。また、処方薬のほうが市販薬よりも
安いという件に関しても触れている。ちなみに医者から花粉症の薬をもらうといくら掛かるかに
ついては私も細かく試算を出しているので興味のある方は下記の記事もどうぞ。
花粉症の薬を病院で処方してもらうといくら掛かるのか計算してみる

薬事日報「鼻噴霧用ステロイド薬「ナゾネックス」を発売 シェリング・プラウ」
2008年9月16日にナゾネックスが発売されたという内容の記事。この時点で世界100カ国以上で
承認されている薬であることと、第二世代抗ヒスタミン薬よりも効果が高いという内容が記載されている。

MSD「MSD株式会社 定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「ナゾネックス®」小児に対する用法・用量の追加承認を取得」
2012年5月25日にナゾネックスが小児適用の承認が下りたとの発表。

隠れメタル「ナゾネックスの記事」
記事で触れている北海道新聞に札医大の白崎准教授が述べていたという内容が興味深い。
「日本では抗ヒスタミン剤の投与が第一選択だが、欧米では局所ステロイド剤が主流。」
とのこと。たしかに医療関係者に配られている花粉症対策のガイドラインでは、軽症の人は
第二世代抗ヒスタミン薬、症状が重めの人は第二世代抗ヒスタミン薬+ステロイド点鼻薬、
重症の人はさらにセレスタミン(経口ステロイド剤、長期服用できずホルモン生成機能の退化、
体の抵抗力が弱まるなど多くの副作用がある)を使うとなっていて、あくまで抗ヒスタミン薬が
花粉症対策の主流になっている。欧米では違うという記載は興味深いところだ。

【アレルギー性鼻炎 市販点鼻薬(スプレー)の注意】
篠原内科外科耳鼻科の医師が作った個人HPで市販点鼻薬に関する注意点をまとめている。
市販の点鼻薬でいうと「血管収縮剤」が入っているものは即効性があるものの、長期的には
さらなる鼻づまり等、症状を悪化させる副作用があるため注意を呼びかけている。
具体的な成分名を挙げて、点鼻薬の分類をしており、わかりやすい。