花粉症の目薬・点眼薬の強さ・特徴比較まとめ

花粉症の目薬・点眼薬に関して、強さや効果がどう違うのか、それぞれの薬にどんな特徴が
あって、副作用はあるのか等を比較した情報を、ここに包括的にまとめておこうと思う。

花粉症の目薬・点眼薬の強さ・特徴の概要

花粉症の目薬・点眼薬を選ぶ際には、上記の表を参考にするとよいだろう。
観点としては、薬の強さに関する観点と、目にしみる、しみないの刺激性に関する観点がある。

まず、点眼薬の効果の強さに関する観点から述べると、花粉症の目薬は大きく3種類に分類
することができ、それぞれ薬の効き方や特徴が異なっている。

一番強いのはステロイド点眼薬であるが、これは実質的に眼科でしか処方ができず、
またいろいろと注意を要する副作用があるため、長期使用ができない。よほど症状がつらい
人以外は選択肢から外すべきであろう。リンデロンやフルメトロン等がこの分類の薬。

その次に強いのが抗ヒスタミン点眼薬。これは現在、花粉症の飲み薬の主流となっている、
抗ヒスタミン薬の成分を目薬として使用したものである。パタノールやリボスチン、アレジオンなどが
この分類の薬。

一番効果が弱いのはケミカルメディエーター遊離抑制薬を使用した点眼薬。リザベンやインタール
といった目薬がこの分類の薬になる。

上記3種類の薬の特徴は後述するが、薬の強弱について知りたい方は、まずは上記の3種類の
薬があるということをご認識いただければと思う。

次に、目にしみるかどうかという目への刺激性に関する観点について。
目薬が目にしみるかどうかは個人差があるので、上記の分類はあくまで参考情報として捉えて
いただきたいが、目への刺激性に関しては、主にpH(ペーハー)と浸透圧が関係している。

学校で習った方も多いと思うが、pHとはアルカリ性とか酸性とかを表す水素イオン濃度指数の
ことである。水溶液のpHが7.0なら中性、7.0よりも小さいと酸性、7.0よりも大きいとアルカリ性となる。

なお、目の涙のpHは7.0から7.4程度なので、中性から弱アルカリ性となっている。
従って、目薬のpHがこの値に近ければ、刺激性は低い、つまりしみない目薬となり、この値から
かけ離れたものとなっていれば、しみる目薬となる。

また、浸透圧に関しては、名前の通り、ある溶液が別の溶液にしみ込んでくる圧力のことなので
あるが、目薬の文脈で使用されるのは、涙と同じ濃度の0.9%の食塩水、すなわち生理食塩水に
対する浸透圧の比を表している。つまり浸透圧比が1.0なら、涙の方に目薬がすごい勢いで
混ざりこんだりはしてこないが、これが0.25とか2.0とか、明らかに違う値だったりすると、しみると
感じてしまうわけである。

以上が、花粉症の目薬に関する概要になるが、結論としては、基本的には抗ヒスタミン薬の目薬で
しみないもの、すなわちパタノール等を選択するのがベストで、市販薬で選ぶ場合は、市販薬の
目薬にはパタノール等のしみないタイプの抗ヒスタミン点眼薬はないので、しみるけれどもザジテン
を使うか、しみないケミカルメディエーター遊離抑制薬の目薬であるリザベンを使うのがベター
ということになるかと。

では、詳細に移ろうと思う。


花粉症の目薬3種類の強さと特徴、効き方について

(上記図は「止めたい!アトピー性皮膚炎のかゆみ」様から引用) 
ステロイド点眼薬、抗ヒスタミン点眼薬、ケミカルメディエーター遊離抑制点眼薬の3種類の
花粉症点眼薬の違いを説明するには、まず、花粉症の原理から記載をする必要があるため、
上記の図を用いて説明を行う。

花粉症は、肥満細胞という肥満とは何の関係もないが、丸々太った形をしていることから
そう呼ばれる細胞に、花粉がくっつくことによって発生する現象である。花粉が肥満細胞にくっつくと、
肥満細胞はヒスタミンという物質を放出し、それがヒスタミン受容体に結合することで、かゆみや
くしゃみ、鼻水などが発生するというのが花粉症の発症原理。

これをどこで食い止めるのかというのが、3種類の薬はすべて異なっているのである。
まず、ケミカルメディエーター遊離抑制薬に関しては、肥満細胞の細胞膜を強化して、ヒスタミン
などを放出されにくくするという効き方をする。一見一番良さそうに思えるが、すでにヒスタミンが
放出されてしまって、かゆいかゆい言っている人に対して即効性がないというのも想像できるかと。
だから飲み薬としてはこの薬は主流になっていないのである。あくまで予防的な役割を果たす薬である。
ただし、目の中ではアレルギー反応が反復するため、一定の効果は期待できる。

次に抗ヒスタミン薬について。これはヒスタミン受容体にヒスタミンよりも先にくっついてしまうことで、
かゆみやら鼻水などの抗体反応がでないようにする薬である。副作用が少なく、効果も高いことから、
現在、飲み薬としては花粉症治療の主力となっている薬である。なお、ヒスタミンは脳内物質でも
あるため、脳内でこの薬が作用してしまうと眠くなってしまうという副作用がある。薬が脳内に移行
する割合が少なく、眠くなりにくい抗ヒスタミン薬は、特に第二世代抗ヒスタミン薬と呼ばれている。
詳細に関しては下記を参照。
花粉症の薬、第二世代抗ヒスタミン薬の強さ・眠気比較まとめ

ただ、抗ヒスタミン薬の目薬に関しては眠くなる副作用はないので、特に気にしなくてよいだろう。

最後にステロイド薬について。これはどういう風に効く薬なのかというと、抗体の反応そのものを
抑制するという効き方をするのである。目がかゆくなって赤くなるのも、くしゃみ鼻水が出るのも
体の抗体反応なわけだから、それ自体を止めちゃいましょう、ということだ。

なので、薬の効き方としては、これが一番強力となる。ただし、大きな副作用もある。
まず、抗体を弱めてしまうということは、つまり雑菌やカビなどに対する抵抗力も弱くなってしまう
ということである。つまり、角膜炎等になるリスクが高まるということである。

また、ステロイド点眼薬に関しては局所的に効く薬なので関係はないのだが、飲み薬や注射等で
体に入れると、体内でのステロイド生成機能を衰えさせてしまうという大きな副作用がある。
そのため、飲み薬に関しても、本当にひどい症状のときに一時的に使用するという、頓服薬としての
使用にとどまっている。

さらに、ステロイド点眼薬に関する副作用としては、継続使用をすることにより、眼圧上昇を引き起こし、
緑内障に至ってしまうというリスクもある。そのため、ステロイド点眼薬を使用する場合は、定期的に
眼科で眼圧測定を行う必要があるのである。

ということで、ステロイド点眼薬については、効果は一番強力ではあるものの、副作用も大きく、
使用に際して注意が必要な薬であり、長期使用もできないため、2,3ヶ月にもわたる花粉症シーズン
における主力の薬としては使用できないのである。

上記の理由から、本来はしみない目薬のほうが患者にとっては望ましいのであるが、
ステロイド点眼薬に関しては、あえてしみる目薬を処方し、患者が長期使用をしないように
促すといった対応を、眼科医でも行っているようである。

ステロイドとは何なのか、というのを詳しく知りたい方は下記を参照いただければと。
点鼻薬としては処方の主流の薬となっている。
花粉症の薬、ステロイド点鼻薬の強さ・特徴比較まとめ


しみるしみないに関係する花粉症の目薬のpHと浸透圧の一覧

先の概要の部分で、目薬のしみるしみないにはpHと浸透圧が関係しているということを述べたが、
もう少しここでは掘り下げようと思う。目薬のpHというのは、薬効成分自体のpHとは限らない。
そもそもpH調整剤という添加物を入れることで、pHを調整することは可能なのである。
ただ、pHを調整すると、薬剤が水溶液に溶けなくなってしまうという現象も発生してしまうため、
すべての目薬を中性にすることができないのである。

ということで、主な花粉症の点眼薬のpHと浸透圧を一覧にして下記に記載しておこうと思う。
それだけだと、つまりはしみるのかしみないのかどっちなんだと思う方もいると思うので、
一応結論としての目への刺激性に関しても記載しておくが、個人差があることはご了承いただきたい。
薬剤名 点眼薬の種類 pH 浸透圧比 目への刺激性
パタノール 抗ヒスタミン薬 7.0 0.9~1.1 しみない
リボスチン 抗ヒスタミン薬 6.0~8.0 0.9~1.1 しみない
アレジオン 抗ヒスタミン薬 6.7~7.3 0.9~1.1 しみない
ザジテン 抗ヒスタミン薬 4.8~5.8 0.7~1.0 しみる
リザベン ケミカルメディエーター遊離抑制薬 7.0~8.0 0.9~1.1 しみない
インタール ケミカルメディエーター遊離抑制薬 4.0~7.0 0.25 しみる
リンデロン ステロイド薬 7.5~8.5 0.8 しみる
オルガドロン ステロイド薬 7.4~8.4 0.9~1.1 しみない
サンテゾーン ステロイド薬 4.0~6.0 1.0 しみる
フルメトロン ステロイド薬 6.8~7.8 0.9~1.1 しみない

上記の通り、パタノールやリボスチン、アレジオンといった処方薬にしかない抗ヒスタミン薬の
目薬はしみないが、市販薬として出ている抗ヒスタミン薬のザジテンの点眼薬はしみ、
ケミカルメディエーター遊離抑制薬の目薬ではリザベンはしみないが、インタールはしみる
というのが結論になる。

以上、花粉症の点眼薬に関して多くの人が気になるであろう薬の強さと目への刺激性に関して
俯瞰的に見ていったので、ここからは各点眼薬の種類ごとに細かく見ていこうと思う。

抗ヒスタミン点眼薬について:抗ヒスタミン薬のポジショニングマップなど

ここまで見てきて、一番強力なステロイド点眼薬が長期使用できるものではないため、花粉症の
点眼薬としては、抗ヒスタミン薬の目薬が主力となることはご理解いただけたかと思う。

では、抗ヒスタミン薬の中では一体何が違うのか、と考える方もいるかと思うので、参考となる
情報を示しておこうと思う。下記でまとめた飲み薬の第二世代抗ヒスタミン薬に関する
ポジショニングマップが参考になるかと。
花粉症の薬、第二世代抗ヒスタミン薬の強さ・眠気比較まとめ
目薬に関して言うと、眠気の副作用はないので、薬の強さの部分以外はあまり関係がないのだが、
現在、処方薬として花粉症の目薬で一番売れているパタノールは、アレロックと同じ成分を使用
している。成分名はオロパタジンといって、飲み薬に使うか、目薬に使うかで名称が変わっている
のである。

アレジオンに関しては、飲み薬では効きが早いという特徴があった。飲み薬としての比較では、
アレロックやジルテックよりも弱い薬という結果が出ていたのであるが、目薬としての比較では、
アレロックやパタノールの成分であるオロパタジンと、アレジオンでは効果に差がないことが、
治験結果で示されていたので、パタノールと同程度に選択肢になりうる薬かと思われる。

リボスチンに関しては、点眼の処方薬としてはパタノールに次いで売れているようであるが、
飲み薬の成分としてはなく、他の第二世代抗ヒスタミン薬との比較データもないため、他薬剤と
比較してどうなのかはよくわからない。インタビューフォームという専門文書を一通り見た限りでは、
ラットやモルモット相手にはザジテンやインタールより好成績を出しているというデータがあるようだ。

ザジテンに関しては、眠気が強いことで有名な第二世代抗ヒスタミン薬で、目薬ではその点は
関係ないものの、pHがアルカリ性であったり、浸透圧が低いこともあって、目にしみる薬となっている。
ただし、市販薬ではオロパタジン、リボスチン、アレジオンの目薬は買えないため、市販の目薬として
抗ヒスタミン薬を選択する場合は、このザジテンが唯一の選択肢となる。ちなみにザジテンに
関しては、後述のケミカルメディエーター遊離抑制作用も持ち合わせている。


ケミカルメディエーター遊離抑制点眼薬について:リザベンとインタールの効果比較など

市販の目薬で販売されているものは、この成分を使ったものが多い。市販の目薬では、
インタールという名称もリザベンという名称も使われていないので、成分名で見るとよいだろう。
リザベンの成分名はトラニラストであり、インタールの成分名はクロモグリク酸ナトリウムである。
クロモグリク酸ナトリウムの英名であるDiSodium CromoGlycateを略したDSCGという呼び方も
あるので、この薬剤に関して詳しく調べる際には頭に入れておくとよいだろう。

ちなみにリザベンとインタール、どちらが強い薬なのかというと、リザベンの方が強い薬である
という結果が、下記の治験論文で出ている。

スギ花粉症における予防的投薬の検討:(I) DSCG, Tranilastの予防効果 A New Treatment of Japanese Cedar Pollinosis:Prophylactic efficacy of Tranilast and DSCG(英語)
内容をかいつまんで説明すると、静岡済生会病院の耳鼻科医たちによる論文で、
花粉症シーズン前から花粉症シーズンにかけて、日に2回から4回、リザベンかインタールを
患者に投与したところ、リザベンを投与したグループは65%に症状の改善が認められ、
インタールを投与したグループは44%に症状の改善が見られたというもの。つまり結論としては
リザベンのほうがインタールよりも効果が高いということである。

ということで、ケミカルメディエーター遊離抑制点眼薬で選ぶなら、目への刺激性が弱く、
また効果も高いリザベンの方がインタールよりもよいと言えるだろう。


ステロイド点眼薬について:ステロイド間の強さ・目への刺激性比較など

花粉症の目薬3種類の中で一番強い薬でありながら、この項目を最後に持ってきたのは、
長期使用ができず、注意すべき副作用も多いため、優先的に使用すべき薬ではないと
判断したためである。

再度記載しておくが、ステロイド点眼薬に関しては、体の抗体反応そのものを抑えることで、
かゆみ等の症状を抑えるという強力な効き方をする一方、雑菌やカビ等に対する抵抗力の低下
により、それらに起因する角膜炎にかかりやすくなること、そして使い続けると眼圧が上昇して
緑内障になってしまうリスクがあるため、定期的に眼科で眼圧測定を行う必要があるという
使用に注意が必要な薬である。あくまで症状が特にひどいときの一時的な使用に留めるべきであろう。

なお、ステロイド点眼薬の中でも、薬剤の種類や濃度によって強さが異なるため、ここでは
その点に関して掘り下げていこうと思う。また、同じ成分名のものでも、薬剤名が異なるものも
あったりするので、それも適宜補足を行う。ステロイド点眼薬間での強さと目への刺激性に
関する分類は下記の通り。

一番強いのはリンデロン(成分名:ベタメタゾン)、リンデロンA(ベタメタゾン+フラジオマイシン)、
オルガドロン(成分名:デキサメタゾン)の、それぞれ濃度0.1%のものである。リンデロンAというのは、
リンデロンに抗生物質のフラジオマイシンを付加したものである。体の抵抗力を弱める働きが
あるステロイドの欠点を抗生物質で補うという、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような薬である。
オルガドロンはリンデロンと同様に強い薬ではあるが、「しみない」という性質が逆に患者の
薬に対する危機感を弱めてしまうことから、現代の眼科医療では使用される頻度が減っているとのこと。

中くらいの強さのステロイド点眼薬にはサンテゾーン0.02%などがある。
サンテゾーンの成分もデキサメタゾンなのであるが、細かく言うと、
オルガドロンの成分名は、デキサメタゾン リン酸エステルナトリウムであり、
サンテゾーンの成分名は、デキサメタゾン メタスルホ安息香酸エステルナトリウムなので、
2つは別の薬である。 サンテゾーンの成分を使ったジェネリック薬品にはビジュアリンという
名称のものがあるので、これも同じ薬だと考えれば良い。

ステロイド点眼薬の中で一番弱いのはフルメトロン(成分名:フルオロメトロン)という薬で、
この薬は様々な濃度で処方され、濃度によって強さが異なる。0.1%のものが一番強く、
0.02%のものが一番弱い。また、同成分を使用した別名称のジェネリック薬品もいろいろと
出ている。フルメトロンのジェネリック名称としては、成分名のフルオロメトロンの他、
ピトス、オドメール、フルオメソロンなどがある。


市販の花粉症用点眼薬の成分を検証し、おすすめをまとめてみる

激安ドラッグストアの棚割りから推測するに、市販の花粉症用点眼薬のシェアが多いのは、
千寿製薬のマイティアシリーズと、ロート製薬のアルガードシリーズのようである。
両社からアレルギー専用と銘打った目薬がいくつか発売されているので、成分を確認し、
医療用のものと何が異なるのかを検証していこうと思う。

なお、点眼薬の成分表記には、パーセント表記と、1ml中の含有mg数表記の2つがあるのだが、
ここは医療用点眼薬で使用されることが多いパーセント表記に統一して記載をすることにする。

まずは千寿製薬のマイティアシリーズの成分一覧から。
・マイティアアルピタットNEXα(マイティアアルピタットEXαは下記成分に加えℓ-メントールが入っている)
クロモグリク酸ナトリウム1%
クロルフェニラミンマレイン酸塩0.03%
プラノプロフェン0.05%
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム0.5%

・マイティアアイテクトアルピタットN(マイティアアイテクトアルピタットは下記成分に加えℓ-メントールが入っている)
クロモグリク酸ナトリウム1%
クロルフェニラミンマレイン酸塩0.015%
プラノプロフェン0.05%

次にロート製薬のアルガードシリーズの成分は下記の通り。
・アルガード プレテクト
トラニラスト 0.5%

・アルガード クリアマイルドZ(アルガード クリアブロックZは下記成分に加えl-メントールが入っている)
クロモグリク酸ナトリウム1%
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03%
プラノプロフェン 0.05%
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5%

・アルガード クリアマイルドEXa(アルガード クリアブロックEXaは下記成分に加えl-メントールが入っている)
クロモグリク酸ナトリウム 1%
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.015%
プラノプロフェン 0.05%
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.2%

上記から、両社とも、大方似たような成分の目薬を出していることがわかるだろう。
千寿製薬からは、クロルフェニラミンマレイン酸塩という成分が多いものと少ないものが2種類
出ていて、それぞれに清涼剤であるメントールが入っているものといないものがあると。
ロート製薬からも、クロルフェニラミンマレイン酸塩が多いものと少ないものが2種類出ていて、
それぞれに清涼剤であるメントールが入っているものといないものがあるが、さらにもう一つ、
トラニラストが入っているものが出ているというこちらは計3種類という構成である。

これらの成分を見てわかることは、基本的に花粉症用の目薬の市販薬に関しては、
冒頭で挙げた花粉症用点眼薬の3種類の中では一番弱いケミカルメディエーター遊離抑制薬を
主成分として使用した薬となっているということである。

クロモグリク酸ナトリウムは、医療用の点眼薬でいうとインタールの成分であり、トラニラストは
リザベンの成分である。ということで、医療用のケミカルメディエーター遊離抑制点眼薬と成分を
比較してみよう。

・インタールの成分
クロモグリク酸ナトリウム2%

・リザベンの成分
トラニラスト0.5%

ということで、「アルガード プレテクト」に関しては、医療用点眼薬であるリザベンと有効成分が
同量含まれているが、インタールの成分であるクロモグリク酸ナトリウムを使った点眼薬に
関しては、すべて医療用の半量しか含まれていないものを使用していることがわかる。

さて、市販の目薬の主成分に関する検証が終わったので、その他の成分に関しても見ていく
ことにしよう。目薬によって配合量を変えている「クロルフェニラミンマレイン酸塩」という成分で
あるが、これは、抗ヒスタミン薬に分類される成分である。つまり、パタノールやアレジオンなどと
同じ分類の薬なのであるが、それらとの違いは、「クロルフェニラミンマレイン酸塩」は
第一世代抗ヒスタミン薬という、強い眠気の副作用を伴う薬であるという点だ。

ただ、目薬に関しては眠気は特に関係がない。にも関わらず、医者から処方される点眼薬として、
これが主成分のものを処方されることがないことを踏まえると、なにか理由があるのだろうと
推測される。

「クロルフェニラミンマレイン酸塩」に関して、薬の専門文書であるインタビューフォームを確認
したところ、下記のような記載があった。禁忌として、
緑内障の患者[抗コリン作用により眼内圧が上昇し、症状を悪化させるおそれがある。]
とのこと。抗コリン作用というのは、第一世代抗ヒスタミン薬に多く存在する作用で、つまりは
副交感神経の働きを阻害する作用である。従って、リラックスができなくなるので、
便秘、口の渇き、胃部不快感等が発生し、緑内障、前立腺肥大症、喘息等を悪化させるという
特徴があるようである。調べた中では下記の記事が一番わかりやすく、詳しいかと。
心のサプリ「抗コリン作用とは?」

上記の副作用が、目薬に関してもあるのかどうかはわからなかったが、探した限り、処方薬の
目薬として、この成分を使ったものを見つけることができなかったので、有効性、もしくは安全性が、
他の処方用成分と比べて大きく劣っている可能性は考慮すべきであろう。

プラノプロフェンという成分は、医療用の点眼薬で言うと、ニフランという目薬で使用されている
ものである。ニフランに含まれるプラノプロフェンの濃度は0.1%なので、市販の目薬に含まれて
いるものは、その半量ということになる。炎症を対症療法的に抑えるのがこの薬の効果。

コンドロイチン硫酸エステルナトリウムに関しては、保水性と弾力性を確保する薬で、関節痛、
神経痛を和らげるのに使われたりするようである。詳細は下記を参照。
ヘルスケア大学「コンドロイチン硫酸ナトリウムとは?」

以上、市販薬でシェアが多いと思われる2社の花粉症用点眼薬の成分についての検証を行ったが、
基本的には「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」を主成分にした薬と理解するのがよいだろう。

なお、抗ヒスタミン薬を主成分にした市販薬の目薬はないのかというと、ある。ザジテンAL点眼薬
という目薬で、有効成分のケトチフェンが0.05%含まれている。医療用点眼薬であるザジテン点眼液も、
ケトチフェンの濃度は0.05%なので、処方薬と有効成分量は変わらない。なお、この目薬は少々
しみるので、それを理解した上で使うとよいだろう。

ということで、結論として、もし市販薬の中から花粉症の目薬としておすすめを選ぶなら、
効果を重視するなら少々しみるが抗ヒスタミン点眼薬であるザジテンALを、しみない目薬の中から
選ぶのであれば、ケミカルメディエーター遊離抑制点眼薬のリザベンと有効成分量が同じである
アルガードプレテクトになるかと。ただ、これも他のページで何度か書いているが、基本的に
市販薬よりも処方薬の方が良い薬、つまりよく効いて副作用が少ない薬が手に入るという構造に
なっているので、パタノールやリボスチンやアレジオンなど、しみなくてよく効く抗ヒスタミン点眼薬を
手に入れたいなら、耳鼻科や眼科に行って処方してもらうのがおすすめである。


その他花粉症の目薬・点眼薬に関する参考ページ

その他、花粉症の目薬・点眼薬に関して、参考になりそうなページをこちらに挙げておこうと思う。
より詳しく知りたい方は、適宜ご覧いただくのがよいだろう。

■花粉症の目薬全体に関する記事
アレルギー性結膜炎に用いられる点眼薬(PDF)
抗ヒスタミン薬の目薬であるリボスチンや、ステロイド点鼻薬のエリザス等を製造販売している
日本新薬によるアレルギー性結膜炎に用いられる点眼薬の解説ページ。ステロイド点眼薬、
ヒスタミン拮抗薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬の3種類が、アレルギー用の目薬には
あるという内容。興味深かったのは、飲み薬としてはあまり有効ではないケミカルメディエーター
遊離抑制薬が、目薬ではアレルギー反応が反復するので一定の有効性が期待できるという記載。
飲み薬とは効く効かないが異なるということなのだろう。

八丁堀眼科医院「アレルギー性結膜炎」
広島の眼科医の方によるアレルギー性結膜炎の目薬に関する記事。アレルギー用の主な目薬として、
①ザジデン②リボスチン③パタノール④リザベン⑤インタール⑥アレギサールの6つを挙げており、
薬の強さもほぼこの順番と解説をしている。なお、ここで出てきたアレギサールという薬は、
リザベン、インタールと同じカテゴリーのケミカルメディエーター遊離抑制薬に分類される薬である。

プライマリケア医のための眼科教室「アレルギー点眼液の使い分け」
プライマリケア医のための眼科教室「アレルギー性結膜炎の治療のためのステロイド点眼薬」
京都の眼科専門医の方によるアレルギー点眼薬に関する記事。
最初の記事では、「メディエーター遊離抑制薬」と「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」の2種類の薬に
関して説明をしており、後の記事ではステロイド点眼薬に関して説明をしている。
「メディエーター遊離抑制薬」は原因の元を抑えるが、効くのに2週間程度掛かり、
「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」はすぐに効くという特徴があるとのこと。
なお、この方によると、パタノールとアレジオンに関しては「メディエーター遊離抑制薬」と
「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」の2つの効果を持ちあわせた「Dual effect」の点眼薬であるとのこと。
また、パタノールはアレジオンの半額で買えるため、パタノールが第1選択薬になるだろうと記載を
している。参天製薬が特許を持っている、使いやすい「ディンプルボトル」の話なども興味深い。
ステロイドに関しては、0.1%リンデロンの10分の1の強さが0.1%フルメトロンとのこと。

ミツイ眼科医院「13号特集 アレルギー性結膜炎 点眼薬 の使いわけ。」
埼玉の眼科医の方によるアレルギー性結膜炎用点眼薬の解説記事。
この方によると、インタールは抗アレルギー薬として最初に開発された薬とのこと。
幅広い症状に効くが、しみるのが欠点とのこと。フルメトロン等のステロイド点眼薬に関しては、
定期的な副作用チェックが必要で、副腎抑制(体内でステロイドホルモンが生成されなくなること)や
易感染性(免疫機能の低下で抵抗力が弱まり、細菌やウイルスなどによる感染症にかかりやすく
なること)、眼圧上昇によるステロイド緑内障といった副作用についても触れている。
かなり幅広い薬について記載があるので、より広く知りたい方は参考にするとよいかと。


■ステロイド点眼薬について詳しく知りたい人向け記事
フジタガンカニュース「ステロイド点眼とは? その①」
フジタガンカニュース「ステロイド点眼とは? その②」
フジタガンカニュース「ステロイド点眼とは? その③ ( 最終回 )」
東京八王子にある藤田眼科の藤田聡医師が執筆されている記事で、ステロイド点眼薬に関して、
非常にわかりやすい記事を書かれているのでおすすめ。
ステロイド点眼薬の特徴として、効果が強く、よく効くが、注意すべき副作用が多いという点を挙げている。
具体的には、眼圧が上昇して緑内障になってしまうリスクと、菌への抵抗が弱まる点の2つ。
眼圧検査を自宅で行う機器はないため、ステロイド点眼薬を使用する場合は、定期的に眼科に
通うことになる。眼圧上昇をしやすい条件として、
・長期間にわたって定期的な点眼を継続している
・使用者が子供であること
を挙げている。また、菌への抵抗が弱まるという点に関しては、具体的にはカビやウイルスによる
角膜炎にかかるリスクを挙げている。この方によるステロイド点眼薬の分類は下記の通り。

しみるステロイド点眼薬
強い:0.1%リンデロン(一般名:ベタメタゾン)
強い:0.1%リンデロンA(ベタメタゾンに抗生物質のフラジオマイシンを付加したもの)
中:0.02%サンテゾーン、ビジュアリン(一般名:デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム)

しみないステロイド点眼薬
強い:0.1%オルガドロン(一般名:デキサメタゾン)
弱い:0.1%フルメトロン(一般名:フルオロメトロン、ジェネリック名称:オドメール、ピトス、フルオメソロン)
最弱:0.02%フルメトロン(一般名:フルオロメトロン、ジェネリック名称:オドメール、ピトス、フルオメソロン)

■その他参考になりそうな記事
医薬ジャーナル社「特集 DSCG~臨床における意義とその将来展望~」
DSCG、つまりインタールに関する記事で、インタール誕生の経緯などが記載されている。
インタールはエジプト産のセリ科の植物アンミビスナガの種子より抽出されたケリン誘導体との
ことで、エジプトの民間療法で使われていた成分を薬にしたとのこと。
アレルギー症状の一つである喘息に対してはかなりの効果があるようだ。

篠原内科外科耳鼻科「アレルギーについて 花粉症科はないか、アレルギー科ですべて解決できないか」
愛媛県の耳鼻科医の方が書いている記事で、耳鼻科医であっても花粉症の症状すべてに
対応できるわけではないということを丁寧に説明している。例えば、目薬に関して、耳鼻科医なら
抗ヒスタミン点眼薬までは出せるが、症状がひどいときのためのステロイド点眼薬までは出せないと。
なぜなら眼圧上昇のチェックをしたり、その副作用が起きたときの対応ができないから。

たしかに、個人的にもかなり調べていて感じたことだが、花粉症の症状といっても、かなり多岐に
わたっていて、一人が完全な知識を有するのはかなり難しいだろうなとは感じている。アレルギー系の
薬は、薬剤の形態(点眼薬、点鼻薬、経口薬等)が異なれど、共通の成分を使っていることも
多いため、関連はあるのだが、どの形態の薬なのかで効果が変わったりすることも多い。

また、アレルギー症状の一つである喘息となると、これはステロイド吸入薬が治療の主役になるので
あるが、薬の幅がかなり広く、ここを専門にしている人じゃないと、副作用と効果を考慮に入れた
最適の薬選びをするのは難しいのではないかなというのが調べていて感じたことである。

ということで、そのへんの話は、上記の記事の方がかなり詳しくしているので、読んでみるとよいかと。

花粉症になった時の治療・病院・薬について語る 7
点眼薬の売上データが記載されており、処方で人気のある花粉症点眼薬が何なのかがわかる。
掲示板ソースではあるが、一部、日本の製薬会社が公開している薬剤の売上データにより、
裏が取れているものもあるので、何がしかの信頼できるソースをベースに記載していると思われる。
結論としては、点眼薬ではパタノール、リボスチン、リザベンの3強。

2012年1-3月売上高ランキング
内服薬
1位 アレグラ 196億円
2位 アレロック 105億円
3位 クラリチン 69億円
4位 アレジオン 63億円
5位 タリオン 59億円
6位 ザイザル 55億円
7位 ジルテック 51億円
8位 エバステル 22億円

点鼻薬
1位 ナゾネックス 46億円
2位 アラミスト 30億円
3位 フルナーゼ 20億円
4位 リノコート 5億円
5位 スカイロン 4億円
6位 エリザス 4億円
7位 アルデシン 2億円
8位 リボスチン 2億円

点眼薬
1位 パタノール 50億円
2位 リボスチン 20億円
3位 リザベン 10億円
4位 インタール 6億円
5位 ゼペリン 5億円
6位 ザジテン 5億円
7位 アイピナール 2億円
8位 アレギサール 2億円